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 ユーザー様の電子天秤を現地で定期検査させて戴くと経年的なスパンの変化よりも格段に大きな誤差が見られることが有ります。
 その原因については故障というよりも新規購入時の未調整が多いようです。
電子天秤はその構造上どうしても重力加速度の影響を受けてしまいます。
 内蔵分銅による調整(校正)機能が無い電子天秤については、「新品だから正確」ではなく取扱説明書に従い「設置場所で分銅による調整を行ったものが正確」とお考え戴くことが重要です。
 特に分解能の高い機種は設置後に移動された時にも再度スパン調整して頂く事をお勧めします。
  おおよその電子天秤には水準器が付いており取扱説明書にも設置時の調整について記載されています。
  しかしながら定期検査で回っておりますと中には気泡の蒸発したものや破損、汚れにより水平が確認できないものも見受けられます。
  では、水準器が無ければ正確な計量が出来ないのでしょうか?

*そこで、下記のような実験をしてみました。
使用した電子天秤 MP-3000 3100g/0.01g 事前調整済み
再現性±1d以内、四隅±1d以内(1㎏)
環 境 温度24.3℃、湿度41%、気圧998hPa、天秤台上
手順
A. 水平を合わせた後スパン調整し1kgの分銅を中心、前、後ろに載せ記録する。
B. 分銅を中心に載せた状態で水準器(電子天秤)を調整足で前高の状態にする。
1.分銅を前後に移動し表示値と降ろした時のゼロ点をそれぞれ記録する。
2.一度ゼロ点を取り再度分銅を中心、前、後ろに載せ、それぞれ記録する。
3.この状態でスパン調整を行いAと同一のチェックを行う。
再度水平を合わせた後スパン調整を行う。(Aの状態)
C. 分銅を中心に載せた状態で水準器(電子天秤)を調整足で後高の状態にする。
1.分銅を前後に移動し表示値と降ろした時のゼロ点をそれぞれ記録する。
2.一度ゼロ点を取り再度分銅を中心、前、後ろに載せ、それぞれ記録する。
3.この状態でスパン調整を行いAと同一のチェックを行う。
A B-1 B-2 B-3 C-1 C-2 C-3
中心 1000.00 1000.16 999.92 1000.01 999.80 999.91 1000.01
999.99 1000.16 999.91 1000.00 999.79 999.90 1000.00
1000.01 1000.16 999.92 1000.01 999.80 999.91 1000.00
ゼロ点 0.00 0.26 0.00 0.00 -0.12 0.00 0.00

単位=g

 この結果からスパン(感度)調整を行った後に水平(天秤の傾き)が変わると偏置荷重への影響が小さくても(B-3C-3)、ゼロ点の移動及びスパンが大きく変化し正確な測定結果が得られない事が解ります。(B-1.2,C-1.2)
 内部構造の差異もあり全ての電子天秤に合致する訳では在りませんが、測定物が試料皿から転げ落ちるような状態は別として水準器が中心に無い状態でもスパン調整を行えば偏置荷重への影響も小さく、ある程度は正確な測定が出来ると考えられます。(B-3,C-3)